延藤くんは、どうなれば満足なんだろう。

伊月くんが目の前で傷つけば、それでいいのかな。

伊月くんが傷つけられるのは嫌だけど、そうなったら、私は解放されるの?


……なんだか、どんどん嫌な方向に思考が引きずられる。

考えるの、やめよう。


延藤くんだって、飽きたら私のこと勝手にふってくれるんじゃないかな。


ため息をついて、次の授業の準備を始める。


「ねえ、コウくん、今日さ」


授業が始まる間際だというのに、そんなことはお構いなしに、延藤くんの周りには人がひっきりなしに集まってくる。

確か……葉山さんだったかな。

今年から同じクラスになって、席も離れているし、彼女とは話したことがない。