はい、ということで、参りました


先輩の発祥地、ならぬ聖地(実家)


聖域に踏み込む前に身だしなみを整える


お気に入りの、大きめな白いニットに、黒いパンツ。まさかの急展開に期待して、沢山歩けるように白いスニーカーを選んで履いてきた


あまり男ウケはしないと、菜留に言われたけれど、先輩はこーゆーのの方が良いって前に裕先輩からアドバイスもらったから、先輩にはウケるはず!!



今からお邪魔しますってメッセージを結構前に送ったんだけど……

未だに既読すら付かない……


これは、勇気の一歩だ!!


先輩のお宅のチャイムに手を伸ばした


すると、すぐに先輩にとてもとても似ている、黒髪が艶めく、美人さんが扉を開けてくれた


「や~ん、羽華ちゃんじゃない!いらっしゃいっ」

「湊ママさん!お久しぶりです!」


甘い香りと、大きな瞳が優しく微笑んで、私を迎え入れてくれた


「えっと、湊先輩は生存されてますか?」

「それがねぇ?さっきまでいたはずなんだけど……、さっきお部屋を覗いたらいなくってね……もしかしたら生存してないかもしれないわねぇ…」

「えぇ……」


先輩、お母様に何も言わずにお出掛けになったのですか?


先輩のお母様は、小さな頭を傾げて不思議そうにしている


というか、出掛けたことに気づかなかったんだなぁ…


先輩は忍者なのか?



いや、そんなことじゃなくて…


私との約束はひとつもしてくれていないのに、どこかに行ってしまったんだな


もしかして、誰か他の人と出掛けてしまったのかな?



私も首をかしげていたら、湊ママさんが私の手を取ると、こっそり喋るように耳元に口を寄せてきた



「湊ね、最近気づいたらいなくなってるのよぉ、それでね?気づいたらいるのよ?怖いわよねぇ」


「湊ママさん、……それって」

「ええ、湊って忍者の末裔なのかしら?」

「…いや、あなたの子ですよ」

思わずつっこんでしまった!!

でも、湊ママさんは楽しそうに笑って、

「湊が帰ってくるで家で待ってる?ちょうどアップルパイがあるのよぉ」

と招いてくれた

でも、丁寧にお断りしてバイバイした



だって、もしかしたら私には会いたくないのかもしれないと思ったから



だって、今だってメッセージに既読は付かないままだし、約束だって最近はしてくれない


そういえば最後に先輩と遊んだのいつだったかな……


付き合う→ラブラブ→冷める→別れ……




嫌あああああっっ





早い!早すぎるよ!先輩っ!


私まだまだ先輩とラブラブランデブーしたいですよ??


ていうか、私達の場合、ラブラブの過程がないですよ!冷めるまで到達してないです!


倦怠期なんてくるまでもないですよ!?



家に帰るまでの道中、私の顔はきっと青ざめていただろう……