「ぐ、ぐるじい!!」

「俺も羽華のこと、…………まぁ、大切かなっ」

「ふふっ、素直じゃないなぁ」


腕の中から顔を上げた羽華は、頬を染めて嬉しそうに笑っていた


あぁ、羽華はこんなに大きかったかな


抱きしめたのなんていつぶりだろうか



俺の腰辺りだった身長も、今は頭一個分ほどだもんな


そりゃ、彼氏の一人や二人いるよな……



「あの、おにーさん、ちょっと近いんで離れて貰えます?」



うんうん、としみじみ感じていたら、不機嫌マックスな、九条湊が目の前にいた


「今いいとこなんだから、ちょっと離れててよ!」

「いや無理です」

「しーっ!あっち行ってて!」


しっしっと手をヒラヒラさせると渋々離れて行った九条湊

羽華も今回ばかりはクスクスと笑っていた



「あのね、私、瑠海にぃが大切だよ」

「……当たり前だろ」

「ただ、大切な人が増えただけなの、家族とかそれ以上に側にいたいって思える人に、先輩に、会えたんだよ」

「……そっか」

「うん、だから瑠海にぃには、見守ってて欲しいな」



うん、なんて言いたくないし

ましてや俺意外に大切な人なんて作って欲しくないし


それが九条湊だなんて、納得出来ないけど



「……いーよ、今日一緒にご飯作ってくれんなら」


「!、はーいっ」



あまりにも羽華が優しく笑うから


九条湊にだけ見せるんだろう、その綺麗な笑顔が見れたから



今回だけは、許してあげなくもないかな