あぁ、俺の天使
こんな悪魔に汚される前に、何とかしなければ……
「なぁ、九条湊」
「はい」
今度は何だと言わんばかりにめんどくさそうな顔をした九条湊
あぁ、やだやだ
俺だって本当に嫌だよ、けど
「俺と付き合おう」
「……………はい?」
最終手段
俺で満足してもらう
我ながらいいアイデアだなっ!
「いや、いやいやいや、おにーさん、どうしたの?いつもこんなチャランポランな訳?」
「え、や、いや、………私もショックですよ」
顔を真っ青にしてワナワナ震えだした羽華
九条湊も驚きで目を見開いている
「俺と羽華ってそっくりだし」
「いや、見た目の問題じゃなく、中身がイカれてるんですよ、あなた」
「身長差もバッチリじゃん」
「……身長バカにしたの謝るんで、マジで一回殴らせてください」
なぜ??
面倒くさい、帰る、とすら言い出した九条湊を止めようと羽華が腕に絡み付いている
いい案だと思ったんだけど……
じゃあ、どうすりゃいーんだ?
首をかしげていると、
「瑠海にぃ!」
「ん?」
羽華が頬を膨らませながら、ズンズンと迫ってきて俺の肩を掴んだ
そして、
「私、瑠海にぃに湊先輩のことを認めて欲しくて連れてきたんじゃないよ!」
「知ってるさ、俺だって認める気はサラサラ無いし、これから一生視界に入る権限すら与えたくないよ」
「……俺、シンプルにおにーさんのこと嫌いになりそう」
「瑠海にぃ!!」
珍しく大きな声で怒ったように俺を呼んだ羽華
口を曲げて、詰め寄ってきた
「私は湊先輩のことを自慢しに来たの!!だから、瑠海にぃが何と言おうと関係ないの!」
「うん、それが嫌なんだよ羽華」
認めて貰うじゃなくて、自慢しに来たぁ?
そっちのが嫌だわ!
「もーいいっ!先輩、今度はお母さんに自慢したいんで、一階に降りましょ!」
「わー、羽華ママはっちゃけてそう」
「ふふん!なんとお母さんはクールビューティーですよ!」
「可哀想に、クールでビューティーの意味が解ってないんだね」
「それは、私に対しての悪口ですかね?」
俺の事なんて見向きもしないでスタコラと階段を降りていく二人
兄より彼氏なの!?
兄、寂しいんだが!?
「う、うわああああああああっ!!」
「瑠海にぃ!?」
「また叫んでるよ、あの人…」
羽華が呼ぶ声がしたけど、振り返らずに部屋に閉じ籠る
何だよ!あいつ!!
いきなり出てきたぽっと出イケメンめ!
扉の前でうずくまっていたら、控えめに背中越しのドアが叩かれた
「瑠海にぃ…」
「………なに」
なに、って何だよ!!
羽華が折角話し掛けに戻ってきてくれてんのにっ!
あー、冷たい今日も俺はなんだってこんなに冷たいんだ…
「私、瑠海にぃのこと大好きだよ」
ガチャ!!ぎゅうううう!「!!!」
小さな声で聞こえた羽華の愛の囁きに、思わず部屋を飛び出して天使をこの手で抱きしめてしまった
俺の腕の中で苦しそうに暴れている羽華