朝、起きて羽華の部屋に入って、羽華の頬を撫でる
これが日課になったのは、もう何年も前のこと
自分に似た顔を拝んで、妹を愛でる
羽華に、俺の浮腫んだ朝の顔を晒すわけにはいかないから、洗面所を独占して完璧な俺を作り上げる
うん、今日も可愛いな、俺
再度鏡でチェックしてから、また羽華の部屋に入って頬を撫でる
起こしはしない
可哀想だからな
そーゆー役目は嫌われ役な母さんに任せる
「羽華ーーーっ、いつまで寝てるのよぉ!起きなさぁーーい」
フワフワとした語尾の伸びた特徴的な母さん声が部屋に響く
あ、ヤバい、俺がまだ羽華の部屋にいるのにっ
慌てて出ていこうと思ったら、ベッドの中でモゾモゾとしていた羽華がムクリと起き上がった
「瑠海にぃ?……おはよ」
はい、可愛い
寝起きすら可愛い、今日も目覚めてくれてありがとう
朝から部屋に侵入していた兄を気持ち悪いと思わないその天使な性格
きっと兄の育て方が良かったんだな
うんうん
「羽華、おはよ。ほら、おいで髪の毛、梳かしてあげる」
「ん、ありがとー」
眠そうに目を擦りながら、ドレッサーの前まで来るとストンと椅子に座る羽華
揺れるフワフワの癖毛
太陽色の髪を昨日、新調してきたフサフサの櫛でゆっくりと梳かす
これが俺の至福の時間
幼い頃から羽華の髪を結うのも梳かすのも俺の特権
そして、今年、美容師デビューを果たした俺のスキルはパワーアップしている
その為朝から羽華の髪をいじくり過ぎて、
「瑠海にぃ、もういいよ?ありがと…」
羽華に苦笑いされるのもいつものことだ
明日も明後日も、俺だけの可愛い妹
そう思ってたのに……