~ ヒロside ~



「あーあ、もったいない」


俺の隣で大きな声を出して、心底うんざりした様子で俺を睨むのは、海にぃ


羽華に似て、可愛い見た目をしてる癖に毒舌でサバサバしてる人


小さい頃はバスケも教えてくれたし、俺にとっても兄のような存在


な、はず……


「ヒロさぁ、お前たちの幼馴染みの関係は、もっと有効に使うべきでしょ?その見た目も!!何のために筋肉聖人になったわけ?」


「うわぁ、心底、筋肉聖人にはなりたくねぇしなった覚えもない」



浴びせられる毒舌にうんざりしながら、二人で家までの道を歩く


海にぃ、しばらくあいつらの側で唸ってたから連れ出すの大変だったんだからな


羽華に後で、ラーメン奢ってもらお


残りの休みの計画を立てていたら、隣から視線を感じて、振り返れば、海にぃが立ち止まって俺を見ていた





「……なんで、譲っちゃったんだよ」




真っ直ぐ


羽華を連想させる、茶色の瞳に見つめられて、何も言えなくなる


わかってるよ


俺が一番



譲りたくなかった


側に居たかった


誰よりもわかってた



なのに……


手放したのは…





「空気だよ」




笑顔でそう言えば、海にぃもふて腐れた顔をしながらも納得したようで、フンッと鼻を鳴らして早歩きで俺の先を歩き始めた




空気




羽華が纏う空気も、九条湊が纏う空気も


穏やかだった



俺は入る隙間なんてなかった



いや、……俺が壊したくないと思ったんだ




「もっと早く帰ってくれば良かったなぁ」



「いや、お前が帰って来ても何も変わらなかったと思うけどな?」


「海にぃ、慰めろよ」


「無理ー、俺、女の子にしか優しく出来ないしー」


「のわりに、彼女いたことねーじゃん」


「……お前、家帰れ」


「!!、ごめっ、ちょ、マジで??鍵開けてくれよっ、さみーーーよっ!」



~ ヒロside 終 ~