一番大切なこと、聞くの忘れてたよ!!


きっと、最近会えなかったのも、冬休み前、放課後、すぐにスタコラと帰っていくのも、連絡を返してくれないのも、今!!謎が解ける!


気まずそうに視線をあからさまに剃らした先輩


逃がすまい


先輩のネクタイを引っ張って顔を寄せれば、観念したように笑った先輩


「……ホント、せっかちなんだから…、心配しなくても、バイトは今月いっぱいで辞めるつもり」


え、辞めちゃうの??


私、今日初めて先輩のカフェスタイル見たのに?


名残惜しいような安心したような、複雑な気持ちになっていると、顔に全力で現れていたようで、先輩に笑われた



「はい、こっち来て?」



すでに近い距離にいるのに、ほらほら、と手のひらをヒラヒラさせて私を呼んでいる先輩


近寄るとくるりと回されて先輩を背中越しに感じる体制になった


すると今度は、「目もつぶって」と、耳元で囁かれた


なに!?何が始まるの??


ギュッと言われた通りに目を閉じると、フワリと先輩の体温が近づいてきた


なにやら、カサカサと髪を弄くられている



「ん、出来た」



先輩の満足げな声が聞こえると、「目、開けて」とツンツンと頬をつつかれた


ゆっくりと目蓋を開けば、窓ガラス越しに反射した自分の姿が映った


「じゃーん、どうでしょうか?」


真顔で、らしくないことを言っちゃう先輩


もう、本当に…この人は



鏡越しに映る私



蜂蜜色の髪に映える、金色のバレッタ


小柄な太陽の形をモチーフに、小さな花が散りばめられているお洒落なデザイン


さっきまで弄られていた髪は編み込まれていて、バレッタで留めてある


「先輩、こんな繊細な作業できるんですね」

「いや、もっと言うことあるでしょっ……、て、泣いてんの?」



ボロボロと涙をこぼす私を見て、目を見開いた先輩



「泣きますよ!、何ですかこのサプライズ!こーゆーのは私担当ですよ!」


「……じょうび」


「え?」



何故か私からは表情が見えないように、顔を後ろに向けて何かをブツブツと呟いている先輩


照れくさそうに首もとに手を当てながら、今度は、はっきりと言ってくれた






「誕生日プレゼント」






ちょっと早いけど、と言葉を濁した先輩


「覚えててくれたんですか……?」

「うん、あれだけしつこく洗脳されるみたいに言われたらね」


目を細めて笑う先輩は、本当に優しく笑っていて、また涙が溢れた



クリスマスの次の日


それが私の誕生日


本当は先輩が覚えてるわけないって思ってたから、クリスマスだけでも、一緒にお祝い出来たらって思ってたよ


でも、こんなの



「惚れ直しちゃうよおおおおっ」

「はいはい」



思い切り先輩に抱きつけば、先輩も私を受け止めてくれて、すっぽりと安定の位置に落ち着く



好き、大好き




「こんな面倒くさい先輩は、私が責任を持ってお婿さんにしてあげますからっ」


「……これからどうなるかなんて解らないよ?」

「え、縁起でもないこと言わないでくださいよっ!!」


先輩の胸に埋めていた顔を上げれば、意地悪顔で笑っている先輩


「末永くお付き合いしましょうね!!」


「あ、俺へのプレゼントは?」


「………」


「……あ、もうダメかも」


「ま、待ってくださいっ!まさかの物欲強めな人ですか!?」


ふいーっと反対方向を向いて笑っている先輩


沢山見せてくれるようになった笑顔も


いつもの無気力な顔も


たまに見せるイタズラ顔も




君となら、まだまだ見つけられそうだ