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例年にしては、少し早い初雪を迎えた今日この頃

すっかり肌寒くなって厚手のカーディガンにブレザーを合わせないと、凍え死んでしまいそう


ですが、私は……

「湊先輩!おはようございますっ、今日は特に寒いですね!カーディガンだけでは寒いですよね!はい、では、失礼してっ…むごっ!?」

「…近づかないで、っていうか、昨日も同じこと言ってたし」



暖かくて素敵な彼氏様に暖めて貰おうと思ったのですが…


そんなことにはならず



ただいま、彼女であるはずの私の頭を鷲掴みにして、全力で顔を強ばらせ、不愉快を全面にアピールしてくるのは、愛しの湊先輩


「ううっ!いーじゃないですかっ!少しくらいっ、朝から営んだって!」

「無理」

「むっ、無理ってなんですか!!」


先輩のブレザーの襟を捲し上げて詰め寄れば、眠そうな瞳が柔らかく笑って、私の頭に手を置いた


「おはよ、羽華」


「……おはようございます」


そんな風に微笑まれたら何も言えなくなるじゃないか

一般的に見たら、順調そうには見えないらしい私達(菜留情報)



でも、私は毎日幸せいっぱいです!



朝の人の少ない暖房が完備してある生徒ホールに移動すると、先輩に手を引かれて少し小さなベンチに座らされた


至って自然な流れで私の肩に頭を乗せると、静かに目を閉じて寝始めてしまった


そんな先輩と付き合い初めて、早くも………


あー、えーっと…


「先輩、私達いつ頃からのお付き合いでしたっけ?」

「………」


ありゃ、駄目だ

私の顔を一度見たものの、何も思い出せなかったらしく、真顔で視線を剃らされた


「三ヶ月目、突入だよ羽華ちゃん」

「あ、裕先輩!居たんですね!」

「うん、最初からいたけど全無視されてたね」


最近かけたらしい、フワフワのパーマを揺らしながら微笑んでいるのは裕先輩


「なんか意外だなぁ、羽華ちゃんなら記念日とか細かく覚えてて毎日おめでたく祝ってそう」

「えー?私からすると今もこの瞬間もお祝いの対象なんで、毎日パリピですよ」

「ほんと、迷惑」

「なーに?先輩?あ、ハグして欲しいんですね、ほーらよしよしっ、うぐっ!!」


頬を片手で掴まれて口が変形する


あー、今日もあしらわれ方が雑なこと…


私が大人しくなったのを確認すると、また私の肩で寝始めた湊先輩


本当に寝てるのかはわからないけど、当たり前になったこの距離が嬉しい

「私、どうしても記念日とか覚えるの苦手で…誕生日とかも覚えてられないんですよ」

「うん、おバカだからね」

「湊先輩、黙ってください」


目を閉じたまま憎まれ口をたたいてくるので、痛くない程度に頬を引っ張る


「ちなみに、湊の誕生日は?」

「12月20日です」

「即答じゃん笑」


私のドヤ顔に爆笑している裕先輩

湊先輩本人は、何を言うわけでもなく静かに私の腕に自分の腕を絡ませてきた


猫か!!可愛い!!


湊先輩の個人情報は、何もかも把握してるからね!

「先輩の頭の先から爪先まで、何でも知ってますよ」

「怖」

「ねぇ、羽華ちゃん、ちなみに俺の誕生日は……?」

「もちろん知りません」

「だよねぇ……泣」

目尻を下げて泣き真似をする裕先輩

「湊はもちろん覚えてくれないし、誰も俺の誕生日祝ってくれないよおおお」

「「…可哀想」」

「わああああっ」


珍しく湊先輩が裕先輩の頭をポンポンとして、裕先輩を慰めるというなんとも不思議な図


一部ファンからすると、高く売れそう…