「おはよー」
「昨日のドラマ観たぁ?」
「やっべ、古典の宿題やってねえ!」
午前8時21分。
開け放たれた窓から吹き込む5月の爽やかな風を肌に感じながら足を踏み入れたのは、ざわざわと賑わう教室。
「誰か課題写させてくれる人〜?」
「またかよ小松。いつもやってんな」
「しゃーねえじゃん!教室出ると忘れんだ、よ」
「っ、」
ふいにぶつかった肩によろけて、履き潰した上履きがきゅ、と申し訳なさそうに鳴いて。
「うわ、ごめん東雲さん!」
「…こちらこそ」
さっきまで周りを確認せず大きな身振り手振りで声を張っていたクラスメイトの小松くんが急に小さくなって顔の前で両手を合わせるから、なんだか逆に申し訳なくなって、早足に自分の席へと向かった。