気がつくと、ぬくい温度の両手が私を包んでいる。泣きたくなるくらい、ぬくい両手。

律さんの、ぬくい両手。

「詩さんっ!どうしてこんな…」

私、今、どんな顔をしてるんだろう?ちゃんと生きてるんだろうか?

「お前、もう男連れ込んでんのか」

律さんとは逆方向から聞こえてきた、変わらず冷たい声。

「あんた、騙されないほうがいいですよ?コイツ、俺の言うことだったら何でも聞くんですよ。何の役にも立たないただの奴隷なんですよ。俺の、ね」

小馬鹿にするような声色、見下した目。

「我慢して家に置いてやってたのに、ちょっと殴られたくらいで、シェルター?何だかふざけたとこに駆け込みやがって、勝手に離婚届送って来やがって。離婚届出してないんで、コイツは連れて帰ります」

すみませんねぇ。お騒がせしました。ただの痴話喧嘩ですよ。言いながら律さんを押しのけようとする。