「お前のせいで、手が痛いじゃねーか」

冷たい声で放たれる言葉を、頭の片隅でどこか冷静に聞いている。

痛くても、止めないんだなぁ。

少し、笑った。

「…何、笑ってんだよ。あぁ?!」

怒鳴りながら、なおも殴られる。

あぁ、拳で殴られてるなぁ。

頬や頭や目元、腕や足やお腹。

肉を拳が打つ音が、脳内に響いている。


明日、この顔じゃ仕事、行けないかなぁ、あ、スーツに私の血がついてるなぁクリーニング出しても取れないだろうなぁ明日クリーニングに出しておかなきゃ、また、音がウルサイって隣の部屋から苦情がくるかなぁ?怒られるのはいつも私だ私が悪いの?全部、私が悪いせい?
記憶が過去と今を行ったり来たり、する。



「……さ…ん…っ……!」


きっと、ってか、間違いなく私はこの世界に要らないんだなぁこんなに殴られても誰も助けてくれないもんなぁこの人、こんな憎しみに満ちた目で私のこと殴り続けるくらい私のこと嫌いなんだなぁだったら、もう構うのやめてくれればいいのに私このまま死……


「…うたさん…っ!!」