一瞬、強く私を、見つめたのち、何事もなかったようにまた、歩き出した律さん。

でもその速度は、決して私を置いていかない、優しい、速度。

一瞬、強く目を瞑って、私も歩き出した。

「…ネギ…」

「はい?」

そんな空間の中、いきなり律さんから出た単語が、「ネギ」だなんて。

笑いを堪えて、返事をした。

「あんなにたくさん、どうやって食べます?」

若干、照れてるのかな?

夕陽のせいかな?

私に問いかけた、律さんの顔が紅く見えた。

それは、あの日のビニール袋から飛び出た林檎の色でもあり、今のこの、夕陽の色でもある。