ふと思いついて、パーカーのポケットから携帯を取り出した。

カメラの設定にして、石の林檎を写真に撮った。

待ち受けにしちゃおうかな。

良いことが起こりそう。

いつの間にか微笑んでいる。 

殺風景だった画面が、律さんの優しさでぱっと明るくなる。

すべてを捨てて、まっさらだった携帯。

こうして少しずつ、自分の本当に望むもので埋めていこう。

自分の部屋も、周りの環境も、目に映るものや、口にするもの。

言葉や音楽、好きな絵、好きな映画。

自分の心さえも、自分で選んで好きにしていいんだ。

自分のやりたいことを本心のままできる。

これ以上に嬉しいことは、ない。