女の子の朝は時間がかかる。
着て行く服は制服だけど、メイクして、髪を巻いて。
1番キレイなワタシになる。

メイクを覚えたのは、高校生になる前の春だった。
塞ぎ込んでいた私を見兼ねて、ママが教えてくれたの。
『少しだけ大人になった気分になれるよ!違う自分になるの、やってみない?』
そう言ってにっこり笑うママに乗せられたのが始まり。

実際、ママの言う通り、違う自分になれた気がした。
泣き虫で弱い心の自分を隠して、見せかけの仮面をつけるような感覚。
これ以上、傷つかないように。
誰からも傷つけられないように。
メイクで自分を偽って、武装してから出かける。

「…よしっ!」
鏡に映る自分を見つめて、少しの隙もないことを確認すると、外の世界に出るために気合を入れた。