「フフッ… あ、ごめんなさい」

フフッて…

「いや、いいのよ、この向きは… ヒャハ」

ヒャハって。
私はもう完全に気付いていた。
紅葉まみれの私の顔は、ギャグかコントか見るに堪えない面白いものになっている事を。

「鰺坂さん、私にも見せてください」

動きづらい口を動かしながら、私はそうお願いした。

「え、でも、まだ完成形ではないし」

「いや、これ以上はどうしようもできないです…」

顔の上での会話に、私は自分の事ながら興味津々で、早く見たくてしょうがない。

「大丈夫です、早く見せてください」

鰺坂さんは必死な瞳の私を見て、こらえきれずに吹き出した。

「ごめんね、つい」

鰺坂さんはそう言いながら、私の手に銀色のずっしりと重たい手鏡を持たせた。
美女と野獣の映画に出てきそうな豪華な手鏡に目を奪われながら、私はそっとその鏡の中を覗き込んだ。