上質のクレンジングでお化粧を落とし、綺麗に顔を洗ってもらう。
馨月亭のエステーチームは超一流の腕を持っている人達の集まりだ。
逆に考えれば、こういうエステを体験できるチャンスをもらった事は素直に嬉しかった。

「それでは、もみじを貼っていきますね」

「…はい」

特上の美容ローションに浸されたもみじは、ほんのりと甘酸っぱい匂いがする。
そのもみじをピンセットで掴み、綺麗に伸ばしてから私の顔に貼る。

「つ、冷たい…」

ひんやりとするもみじは柔らかい和紙のような感触だった。
エステシャンが二人がかりで何枚も何枚も私の顔や首に貼っていく。

「こ、こんな感じですか?」

こんな自信のないエステスタッフの声を初めて聞いた。

「この紅葉はこの向きが正解でしょうか?」

どうやら私の目もとの辺りの紅葉に納得がいかないらしい。
鰺坂さんも加わって、私の顔の上でああでもないこうでもないと言い出した。