「鰺坂さん、やめた方がいいよ。
さくらを実験台にする時点で馬鹿げてる。
こんな行き当たりばったりで訳の分からないパックを始めるなんて、馨月亭の評判に傷がつくだけだよ」

鰺坂さんは唱馬の言葉を受け、壁際に立っている慈恩の方をチラッと見た。
慈恩と唱馬、二人とも馨月亭の人間に違いないが、力関係でいえば明らかに慈恩が上だ。
でも、鰺坂さんもフリージアのマネージャーとして、スタッフを守るという強い信念がある。
鰺坂さんは慈恩の方へ向かって一礼をした。

「すみません、今年の紅葉スパは、私達が最初に計画した通りの手順で進めていきたいと思います。
紅葉パックはまた来年にでもお願いします。
安全性が分かったうえで」

「いや、それはこっちが決める事だから。
高梨さんも大丈夫って言ってる事だし、それにそんなアレルギーが出ると決まったわけじゃない。
試しにやる事に俺は意義はあると思う。
それを商品化するかどうかは別として」