「さくらを知れば、手離したくなくなる。
必ず、結婚したいって思わせる魅力がある。
僕はそうなったら、さくらと結婚する事を真剣に考える。
でも、慈恩はそれはできない。
だから、さくらの事はほっといてほしい。
慈恩の気分次第で彼女を振り回さないで。
本当に純粋で、真っ新な子だから…」

パーティションの陰で私は膝から崩れ落ちそうになる。
どうして、唱馬は私の事をこんなに好きになってしまったのだろう。
唱馬の言葉は愛情と思いやりに満ちあふれている。
慈恩へのときめきと唱馬へのときめきは、ここにきて質が違う事に気が付いた。
慈恩への胸キュンは激しく高鳴るもので、唱馬への胸キュンは静かに心に響いてくる。

「俺に自由結婚がないなんて、一度も思った事はないよ。
もし、本気で好きになった人がいたら、その人と結婚するに決まってるだろ」

慈恩は吐き捨てるようにそう言った。

私は自分の事を言っているはずはないと頭で分かっていながら、でも、自分への言葉であってほしいと勝手に祈っていた。