慈恩は最高の笑みを浮かべて頷いた。
「紅葉狩りの時に、俺の考えに賛同してくれただろ?
それから真剣に考えたんだ。
フリージアの秋のイベントにしては、紅葉スパはありがちな内容だったし、みずみずしく美しい紅葉の葉っぱを上手く活用できないかなって。
さくらが愛情込めて拾うのを見て、そう考えた」
さくら? それもこの場で??
一瞬、この場が凍り付いた。
唱馬が呼び捨てにする事とはわけが違う。
私は何事もなかったように、分かりましたと笑顔で返事をした。
でも、隣で唱馬が首を横に振っている。私の腕を掴んだまま。
この緊迫した嫌な雰囲気を早く終わらせたい。
次期社長がさくらと呼び捨てにしたこの事実を、皆の勘違いだと思いこませたい。
「高梨さん、大丈夫? そんな実験台になって」
慈恩に腹を立てている鰺坂さんが、私の事を気の毒がってそう声をかけてくれた。
この一言で、皆、私に同情し始める。