「紅葉スパに関してもう動き始めている皆には悪いんだが、このイベントの目玉を紅葉パックに変えてほしい。
というか、そこにアイディアがいかなかったのがすごく残念なんだけど」

「紅葉パックって? どういうものでしょうか?」

今、話し合いの場となっているエステ専用のトリートメントルームは、普段は窓からの見晴らしがよくトリートメントのいい匂いが漂う素敵な空間なのに、今は、何だか雲行きが怪しい。
それは、慈恩を問い詰める鰺坂さんの引きつる顔が暗示していた。
そして、最悪な事に、そんな緊迫した中、唱馬が遅れてこの場へやって来た。
慈恩はそんな唱馬の事は完全にスルーする。

「この間、高梨さんと一緒に紅葉狩りに行ってたくさんの落ち葉を拾ってきた。
それで、その紅葉の葉っぱを知り合いの医学博士に調べてもらったら」

高梨さんと一緒に紅葉狩り…という言葉だけが、女性スタッフの中で一人歩きしている。
少しだけざわつくのが分かった。
単純な私は、何だか嬉しくて心が躍り出すのを必死に抑える。