次期社長は、ゆくゆくこのフリージアを箱だけ残して、完全リニューアルを望んでいるらしい。
そういう時期社長の企みは本当なのか?
全てにおいてアンティークなフリージアを愛して止まないスタッフは、それは絶対に阻止したいと思っていた。
だから、みんな、そんな事を企んでいる慈恩の事は嫌いになる。
そして、突然、フリージアに現れた慈恩は鰺坂さんにこう命令した。
「鰺坂さん、紅葉スパ担当のスタッフを全員集めて!」
鰺坂さんは笑顔を見せずに、スタッフに召集をかけた。
エステシャンのスタッフを始め、この旅館の御曹司を見る事が初めての人間が何人かいる。
スタッフ用のスーツを簡単に着こなし、ちょっと斜に構えた表情の慈恩は、もうセクシー要素が駄々洩れだ。
それに、切れ長のスッとした二重の大きな瞳を隠す長方形の黒縁のメガネは、嫌というほど大人の魅力を引き出していた。
もう女性スタッフのハートを射抜くには、最高レベルに達している。