時間をかけて月影は少しずつ元気を取り戻していった。
庭の鈴蘭に水をあげ、身を守るために私が法術を教えた。
月影の法術は凄まじい。使い方を誤れば危険になる。
兎に兎月と名付け月影に友として送った。
しかし善良だった月影がなんとしたことか、法術の練習中にこう言ったのだ。
「法術を極めたら天帝と天后を殺します」
「月影っ。今、なんと!?」
「一族と母上の仇を討つのです」
そういい不敵に笑う彼に以前の善良さは無かった。
私はそんな月影を元に戻したくて一族と母親の記憶を消した。
「月影…ごめんなさい。でも、あなたには善良でいてほしいの」
この子には穏やかに過ごしてもらいたい。
誰か好きな人を見つけこの宮で幸せに過ごしてもらいたい。
記憶がなければ恨みや憎しみからは無縁になれるだろう。