誰が見ているかわからないのに、僕は黒髪ロングヘアーのウィッグを躊躇うことなく外す。短く自分で切り揃えている明るい髪があらわになる。目の前にいる朝倉さんはもちろん驚いていた。

「僕は、女装を強要されている男の子なんだ。そして、君のことが好きなんだ。……そんなことされたら、自惚れちゃうよ」

誰かが来たらまずいので、ウィッグをもう一度被り直す。すると、朝倉さんに手を掴まれた。朝倉さんの手は小さくて、柔らかくて、僕とは違う。

「……自惚れていいよ。だから、一口あげる」

差し出されて初めて飲んだミルクティーは、飲んだ後もずっと甘さが舌に残っていた。少しぬるくて、これが恋の味なんだと思ったよ。心臓の鼓動がうるさい。

「一緒に帰ろう?」

君が笑顔で言い、僕の中の恋がさらに膨らんでいくんだ。



ミルクティーを放課後の教室で飲んでから、僕と朝倉さんの距離はどんどん縮まっていった。

一緒にいることが増えて、今まで一人を貫いてきた僕が朝倉さんといることにみんな驚いていた。