「大丈夫か?」

処置も終わり、新太さんと2人になった病院の特別室。
ベットの上で体を起こした私と、その横で椅子に座る新太さん。

「もう、平気」

縫ってもらった右手の傷口に痛みはあるものの、それ以外に不調を感じるところはない。
どちらかと言うと、体よりも心のショックの方が大きい。

「しばらく入院になるな」
「うん」
覚悟はしている。

私は塙くんを止めるためにナイフを素手で握った。
当然私の手は切れてしまって、大きくて深い傷が残った。
すぐに敬が縫ってくれたから傷自体はふさがったけれど、たくさんの神経が走っている手のひらを切ってしまったからには後遺症が残る可能性もある。

「今は何も考えなくていいから、ゆっくり休め」
「うん」

言いたいこともあるだろうに私を気遣ってくれる新太さんに、私は感謝した。