「さあ、どうぞ」

目の前に並んだのはホカホカのベーグル。
1つにはクリームチーズとサーモン。もう一つにはオレンジとヨーグルトと蜂蜜。
たいして手間をかけたわけでもないのに、彩のいい朝食が出来上がった。

「すごーい、オシャレですね」
「そう?」
「ええ」

本当に驚いているのか、彼女は目の前のベーグルをジーッと見つめている。

「ほら見せるために作ったんじゃないんだから、食べて」
「はい、いただきます」

彼女に勧めながら自分でもパクリ。
うん、美味い。

「うぅーん、美味しぃ―」
この日一番大きな声で、彼女が叫んだ。

ホッ、気に入ったようでよかった。

「よかったらまだあるよ」
「いえ、十分です。それにしてもこのベーグル美味しい」
「まあな、兄貴の嫁さんの手作りだから」
「へー」

あれ、彼女の手が止まった。

「どうした?」
「・・・別に」

どう見ても別にって顔ではない。