「優乃?」

「っ……あ、ごめんなさい!」


不思議そうに顔だけ振り返ってわたしを見た伊月先輩。

そこでハッとして、急いで回した手を離した。


わたし……。



「し、失礼しました!!」

「優乃!」

「要っ」

「悪いな」



頭を深く下げてから体を反転させる。

回る視界で伊月先輩が女の先輩に謝って頭の上に手をぽんと乗せたのが見えた。


モヤッとする。

そのモヤモヤはなかなか消えない。


これって、きっと……。



「優乃、こっち」


歩き出したわたしにすぐに追いついてきた先輩はわたしの手を繋いでくる。

そのまま促されるように歩いてやっと目的の屋上へ着いた。



「ごめんな、おれが来るの遅かったから怖い思いさせたよな」

「い、いえ……大丈夫です……」



屋上でふたりきり。

いまわたしたちを見ているのは太陽だけ。


ドキドキしてしまう。

心臓の音がうるさい。