「……あいつがお前に近づくから悪いんだろ」
「え?」
「なんでもねぇよ」
翔ちゃんは拗ねたような表情でふいっと顔を背けて自分の席へ行ってしまった。
よくわかんない。
拗ねてるのはわかるけど、その理由はいつもわからない。
翔ちゃんはわかりやすいようで、わからない。
「わかりやすいわね」
「え、わからないよ?」
「優乃には、ね」
理沙ちゃんも意味深な表情をしている。
みんな難しいことばかり考えている気がするな。
そう思いながらも、スマホを出して伊月先輩に送るメッセージを作成した。
理沙ちゃんの表情も気になるけど、翔ちゃんが伊月先輩に失礼なことを言っていないかも気になる。
わたしが逃げてきちゃったのが悪いんだけどね。
《特になにもなかった。それより、今日も昼休み一緒に飯食わね?》
すぐに返信があった。
翔ちゃんが失礼なことしてないのならよかった。
と、ホッとする。
「理沙ちゃん、先輩にお昼ご飯一緒に食べようって誘われたんだけど」
「また?まぁ、いいけど明日はあたしとね」
「ありがとう。明日はぜったい理沙ちゃん。約束」