思わずビクッと肩が上がった。
え、怒ってる……?
「ケンカしてないんじゃねぇの」
「そのはず、なんですけどね……あれれ?」
先輩の言葉に戸惑う。
してないよ。
どっちかと言えば、置いて行かれたわたしが怒るんじゃないの?
べつに怒らないけど。
「なんでついて来てねぇの」
「翔ちゃんが歩くの速すぎたんだよ」
「なんでこいつがいんの?」
「先輩だよ!?こいつとか言わないの。先輩、すみません!!」
戻って来るなりケンカ腰の翔ちゃんに慌てる。
急いで隣にいる伊月先輩に頭を下げた。
けど、先輩はなにも言わない。
怒ったかな。これは怒るよね。
いまのは完全に翔ちゃんが悪い。
「優乃、行くぞ」
「まず謝らないと」
翔ちゃんはむすっとした表情で顔を逸らす。
拗ねたらすぐその顔をするのは昔からの癖だ。
「先輩、すみません」
「優乃は謝らなくていい」
「俺も謝らないっすけど。じゃあ、俺ら行くんで」