わたしは、かなりかいつまんで王子の存在を打ち明けた後で、さっきのことを今度は事細かに話した。
先生はわたしに彼氏が居ることに何故か凄く驚いていたけれど。
元彼と別れてからまだそんなに時間が経ってないのにもう新しい男かよって思われたかな…。
ひと通り話し終えてオレンジジュースを飲んでいると、それまで黙って話を聞いていた先生がゆっくりと口を開いた。
「そっかぁ。もう新しい彼氏出来ちゃったか。…また出遅れたな」
「え?」
最後の方が上手く聞き取れなくて聞き返したけれど、「ううん、独り言」とかわされてしまった。
「し、尻の軽い女だって、思いますよね…」
「そんなことはないよ」
「…いいんです。自分でも尻軽いなって思いますもん」
ズーンと自分で自分の言葉に打ちのめされていると、先生は「ふむ」と何か思うところがあったみたいで、
「ねぇ、凛々ちゃん?」
不意にわたしの顔を覗き込んできたから思わずドキリと胸が鳴った。
先生も王子に負けず劣らず整った顔立ちしているのに加えて、この大人の余裕と色気。
医者と患者という線引きがなかったら好きになってしまいそうだ。
そう思ってしまうわたしはやっぱり尻軽女…。
「凛々ちゃん?」
すっかり自分の世界に入ってしまっていたわたしは、もう一度名を呼ばれて我に返った。