昇降口を出ると校門辺りに人だかりが出来ているのが見えた。

男子ばかりではなく女子も集まっている。

俺の凛々サンはいったいどれだけの人を虜にすれば気が済むのか。

出来れば俺だけにしておいて欲しいものだ。

そんな事を考えながら校門に向かって歩を進めていると、

「天音っ!」

凛々サンには遠く及ばない何とも不快な女が後ろから走ってきて俺の腕に自身の腕を絡ませようとしてきた。

それを軽くかわすと、

「失せろ」

低い声で唸れば、女は一瞬ビクリとして一歩俺から退いた。

が、女はそれでも俺の近くをちょろちょろして話しかけてくる。

「ね、ねぇ天音っ!今ね、校門のところにすっごい美少女が立ってるんだって!カレシを待っているのかな?あんな可愛い子がカノジョだとしたらカレシは色々大変そうーーー」

「確かに大変だけど、それが何。てか、お前だれ?」

「ーーえ、」

クスクス可笑しそうに笑っていた女は、俺の言葉で一瞬にして表情を強張らせる。

「な、何を言っているのっ!?まさかアタシのこと忘れたわけじゃないでしょう!?」

「忘れたもなにも、知らねぇし」

女は極太なアイラインとバッサバサなつけまつげをつけた目をこれでもかと言うほどに見開きながら、

「バカ言わないでっ!アタシよ!?サラよ!この間アタシたちーー」

「やっぱ知らねぇわ」

何故か愕然(がくぜん)としている女を無視して、今度こそ凛々サンのもとへと向かう。