「…マジかよ」

信じられないといった表情を浮かべる慧に俺も苦笑してしまう。

慧が驚くのも無理はなかった。

俺は今まで彼女を作ったことがないからだ。

経験がないわけじゃない。

俺達はシたい年頃なので欲を満たしてくれる女は今まで沢山いた。

ーーが、一回寝た女に対しては一切興味がなくなってしまう。故に彼女なんて作る気も起きなかった俺が「これからデート」なんて言ったものだから、俺の女に対しての扱いを知っている慧は酷く驚いたのだ。

「…訊くの怖いけど、その子のこと、本気なのか?」

「本気も本気。高校卒業したらすぐにでも結婚したいぐらい」

慧は口をあんぐり開けたまま固まってしまった。

その時俺のケータイがブルブル震え、誰かからの着信を知らせた。

そのディスプレイに表示された名前に、愛しさのあまり無意識に表情が綻(ほころ)ぶ。

「もしもし、凛々サン?もう着いたの?そんなに怒らないで?今すぐ行くから」

スマホ越しの凛々サンは半泣き状態だったな。

「彼女から早く来てって泣き付かれたから、俺行くわ。また明日な」

固まったままの慧のことは放っておいて一目散に凛々サンが待っているだろう校門へ急いだ。