「ふう…」
ガシャリ。家の鍵をテーブルに置き、そのままベッドへダイブした。
薬を服用しなくてはいけないほど低い血圧に目眩体質。故に夜更かししなくても朝が破滅的に弱くて起きられない。
…この病気は理解もされなければ、相手に誤解を与えてしまうある意味厄介な病気だ。
大本を辿れば自律神経失調症。正確には起立性低血圧。
あれから季節は少し進んでいて、現在は所謂(いわゆる)季節の変わり目ど真ん中。
季節の変わり目が一番体と心にクる。
1日の中でも夜が一番調子良くなるのに今日はなんだか気持ち悪さが取れなかった。
どくどくと心拍数も上がり、もうひとつの持病でもある心臓の方の頓服をベッドすぐ横のサイドテーブルの引き出しから出して同じくすぐ側にあるペットボトルの水でゴクリゴクリと薬を体内に流し込んだ。
少ししたら効いてくるとは思うけれど、念の為わたしの主治医である武石(たけいし)先生に連絡を入れる。
するとまもなくして着信を知らせる音と振動でケータイを持つ手が震えた。
『凛々ちゃん。大丈夫?薬飲んだ?』
その優しくて穏やかな声音に心から安心できる。
「…はい、飲みました。すみません、こんな時間に」
『構わないよ。今からそっち行くね』
「えっ!?あのっ、でも…っ」
『キミの顔を見ないと安心して眠れないかも』
「っ、ズルいです、先生は、」
『ははっ、待っててあと1分ぐらいで着くから』
「えっ!?ちょっと部屋片付けたいん、」
ピンポーン。
「…」
早すぎる来客をドアを開けつつ睨んだ。