「その様子だと藍斗さんから何も聞いていないみたいだね」


お兄ちゃん!?


あの人…他の男入れるなよとか言っておきながら自分で招いてない!?


お兄ちゃんの思考回路は理解しかねん。


「んーと、まずどこから話そうか…」


コップを置きながら話を聞く。


何気なく正座をしながら。


「藍斗さん、お兄さんは俺の尊敬する人なんだ。」


目尻を下げながら話す彼。


お兄ちゃんのこと、大好きなんだな。


恋する乙女みたいな目をしている。


「その藍斗さんからお願いされて。『妹が一人暮らしは心配だから一緒に住んでやってくれないか』って。それが先週ぐらいの話。」


出た。お兄ちゃんの心配性とシスコン。


ここまで来るともう病気だよ、お兄ちゃん。


やれやれと頭を抱える。


ていうか漆原くんも漆原くんだよね。


お兄ちゃんにお願いされたからって普通ここまでする?


「ってことで今日から一緒に暮らすから」


「拒否権なしね」と笑う彼。


いやいや、なにが『今日から一緒に暮らすから』だよ!


全然何も聞いてないんですけど!?