「早瀬くん!」
と、そんなわたしたちの傍らに恵美(えみ)先生の登場だ。
恵美先生とは、社交ダンスを教えてくれていたダンス科の若い教師。
ハヤセと2人で踊っていた女性のこと。
「あなたとゆっくり話したかったの。本当にイタリアから帰国してたのね!」
「ええ。先生は今年も大会で優勝したらしいですね、おめでとうございます」
「あら!知ってくれてるなんて光栄だわ」
「イタリアの情報は未だに耳に入ってくるものですから」
そういえば恵美先生は、イタリアで有名な社交ダンス師さんなんだっけ…。
だから彼とも親睦があるんだろうと。
2人の会話をちょっとずつ聞きながらローストビーフを頬張るわたし。
……を、隣でニヤッと笑ってきた1人。
「なーにバカエマ、あんたすっごいブスな顔してるわよ?」
「っ!ぶ、ブスって…!」
もしかしてバレてる……!?
このわたしの心をギスギスと埋めてくる何かの感情が。
理沙には見えてるっていうの……?
「あのね、ハヤセを見てると胸がドキドキして、それで他の女の人と話してるところを見るとギッスギスなの」
これ、なんだと思う?
と、2匹の野良猫に話しかける放課後。