どうにも舞踏会は御曹司側からのお誘いに応えるのがわたしたちの役目らしい。
そこで2人だけの会話を交えたり、約束事をしたり、要するに新たな出会いの場ってことだ。
わたしは逆にそれはそれで踊らなくていいなら全然ひとりでも平気だけど…。
「あ、でもバカエマには早乙女さんがいたわね。毎年来てるみたいだから、一緒に踊ってくれるんじゃない?」
「うげっ」
「…なによその反応。相変わらず下品なんだから」
その名前はもう聞きたくなかった。
あの最悪な夜を思い出すし、だけど今も隣にいてくれるハヤセ。
わたしの気分を変えるかのようにご飯がこんもり乗ったお皿と、ソースたっぷりのローストビーフが追加された。
「理沙、舞踏会って欠席しちゃだめなの…?」
「はあ?だめに決まってるでしょ!あんた普通でもその成績なんだから留年したいの!?」
わかってますよーだ。
ちょっと言ってみただけだもん…。
極力あいつには会いたくないし、一番は舞踏会で何かやらかしちゃうんじゃないかって不安もあって。
美味しい料理が出たりするなら、わたしはずっとそれを食べていようと心に誓った。