そんなものは始めなくていい───と、即答したい気持ちだった。


来月に開催される舞踏会は、聖スタリーナ女学院の1年を締めくくる大切な行事らしく。

毎年毎年たくさんの人たちが訪れて、生徒と御曹司で社交ダンスが繰り広げられる歴史あるダンスパーティー。



「あっ、うわっ、」



何ひとつ珍しくもなく、ぐらりと傾いた花瓶。



「エマお嬢様…!」



ゴトンッ!


………セ、セーフ…。


ステップを踏み外したことにより床に落ちた花瓶は、なんとか水をこぼすだけに留まった。

見守っていたハヤセは落とす前に駆けつけて盾になるようわたしをガード。



「もう破壊神っ!!水が飛んだじゃない…!!」


「割れて怪我したらどうするつもりなの……!?舞踏会に出られらなくするつもり!?」


「なにをやっているの問題児……!!」



久しぶりの呼び名だった。

最近は理沙と仲良くしていることもあって、クラスメイトから軽蔑される頻度も少なくなっていたけど…。


でもやっぱりわたしはわたし、こうして総攻めを食らう。



「エマお嬢様、お怪我はございませんか?」


「…うん。みんなごめんなさい…」