「待った?」
車の中で携帯を見ながら、タバコを吸っているノブに言った。
「ちょっとね。」
ノブは笑って答えた。
ノブの家まであたしが持ってきたCDを聴きながら、この曲のこの部分の歌詞が好きなの!とあたしは語っていた。親に宛てた手紙のことを思うと落ち着かなくなる気持ちを、誤魔化すように話の話題を考えている。
「今日はなんかおしゃべりさんだね(笑)」
あたしの様子がへんなことに気づいてるのか、気づいてないのか少し笑顔が引きつった。
「そんな、ことないよ!」
「俺は嬉しいけどさぁ〜。」
ノブには何でも見抜かれているようで、たまにコワイと思う。
「もう少しだから。」
そう言われて周りを見渡した。あたしの住んでいるとこよりも広い町。車の数も人の数も見るからに多い。ノブの家は白っぽい壁に紺色の屋根のアパート、1階と2階を合わせて8部屋ある。ノブの部屋は2階の一番奥だった。204号室。
自分でだらしない人だからと言っていたわりには、シンプルで主に白と黒の家具が多かった。部屋はキッチンのある部屋と、もう二部屋あって寝室と仕事部屋みたいだった。初めて入る男の人の部屋に興味津々のあたしを、ノブは不思議そうにソファーに座って見ている。