季節は春。太陽の日差しが強く、春の木漏れ日など感じることが出来ないくらいの暑さが俺の背中に当たってくる。

『あー。。。学校だるいな。。。』

俺は一之瀬岳。高校2年になる。朝から学校という監獄に行かんといけないことに憂鬱になっていた。 周りには仲良く友達同士で話しているヤツらや公然でイチャイチャするカップルが朝からテンション高めに話していた。

俺は特別頭がいいわけじゃないし、容姿だってイケメンやスポーツマンみたいな感じじゃない。そして、友達や彼女が居ないのが1番の欠点だ。いわゆる陰キャの立場なのだ。そう、あの日がなければと頭の中でグルグルと巡って気分も落ち込むんだ。現実逃避したくてグレたくて底辺の高校を選んで1年経った。

『これから死ぬまでこのままのなのかな』
うつむきながら学校に向かった。

『みんな、今日は転校生が来たから紹介するぞ』
朝礼で担任の那珂川先生が唐突に言ってきた。
『入ってきなさい』との言葉ともに教室の扉が開く。

ガラッ

『え、可愛いやん』
『めっちゃ仲良くなりたい』
ってクラスの男子が騒ぎ出す。
『うわぁー可愛すぎやん』
『このクラスに似合わないよ』
って女子が負けずにと話し出す。

『コラコラ、静かにしろ!ったく、じゃあ自己紹介を』

『はい、静岡県から父親の転勤でこちらに来ました、田城綾奈といいます。仲良くしてください。よろしくお願いします。』
男子共はいぇーいと囃し立てる。綾奈は顔を真っ赤にしながら笑っていた。

『じゃあ、席は、、一之瀬の隣に座ってくれ』と担任が空いてる俺の横の席に誘導した。
げっまじかよと心の中で俺は呟く。
俺が座っている席は窓側の端っこだ。1人で窓を眺めているのが毎日のルーティンだった。誰にも話しかけられることもなく毎日が穏やかだったのに。。。
『まあ相手にしなきゃいいか』と思うのだった。

こんなに学校が嫌になったのは初めてじゃないかな。昔はもっと勉強に取り組んでいたし、スポーツもやってた。上手くもないけどなんだか楽しかったのは覚えている。俺の周りには常に人はいた。でも今は俺に話しかけてくる人はいなくなった。俺は悪くないけど絶対あのことがあったから俺や周りの人が変わってしまったんだ。俺は基本的に寝て過ごせば授業が終わるのが日常だった。まあずっと真面目に勉強してたのが急にしなくなったから先生たちが慌てていたのが申し訳ないとは思った笑

退屈すぎる学校が終わり、俺はいつものようにいつものルートで帰る。他の生徒は部活とか居残り勉強をしてるが俺は興味がない。スポーツ万能ではないし、常に平均並みをキープしている。
『夕焼けきれいやな』
俺は学校帰りにいつも寄るところがある。それは地元の公園。高台にあって海が見渡せるのが1番癒しスポットになっている。
そこに1時間ほど公園でボーッとして帰るのがルーティン。

『ただいま』
『シーーーン』
『誰もいるわけないか』
俺の家は片親で産まれて父親の存在が知らない。母親はパートで夕方から夜遅くまで働いて俺一人を養っている。
『なになに、夜ご飯は何か買って食べてください』と1000円札と置き手紙があった。
『はいよっと、じゃあコンビニに行くか』
俺は1000円を握りしめてコンビニに向かう。最近母親の手料理食べてないな、と思った。

家で1人寂しく食べるのは慣れたとはいえなかなかに辛いな。俺には頼れる家族がいなかった。ずっと1人だと思って生きてきた。俺も高校生だしバイトくらいしたいと親に言ったら
『バイトなんてするもんじゃない、あんたに働くことができるとは思ってない。』と全否定された。
じゃあ俺はなんのために生きているのか分からなくなった瞬間だった。それ以降は親には関わって欲しくなくて何をするにも親には伝えずにバイトもした。それでも何かと言ってくる親に対して嫌悪感や憎悪感が日に日に増していくの感じていた。

ある日の休日、俺はバイトが休みやって家でゴロゴロとしていたところ、急に親が『私の彼氏を紹介するね!』
と突拍子もないことを言い出した。
俺は目が点になるくらい唖然として『勝手にどうぞ』と冷たくあしらった。
母親は自分のことになると目の前のことしか見えなくなるのが常にやった。
そこにチャラ目な男が入ってきた。
『お邪魔します。君が息子なん?ほんとに可哀想だな』
と男が意味深なことを言ってきた。
その時『ちょっと言わないでよ』って母親が笑いながら彼氏とイチャイチャしていたの見て吐き気がした。
母親の顔を見たくなくて外へ飛び出した。
誰にも迷惑かけない生き方がしたいと固く強くそう思った。