私の周りにヤンデレしかいないんだが

その翌日、私はお昼休みに中庭でお昼を食べていた。一人で。

いつもは教室で雫ちゃんと話しながら食べる。でも今日は、雫ちゃんが家の用事で休んじゃったから一人だ。

お弁当を食べ終わり、芝生の上にゴロンと寝転がる。お嬢様だったら絶対にしない行動だ。お金持ち学校の綺麗な制服が汚れるけど、庶民だから気にしない。

風が気持ちよくて、うとうとしてしまう。昨日は夜遅くまでドラマを見ちゃってたからな……。

「おい、美紅」
(襲うか)

「ふえっ!?」

とんでもない心の声が聞こえたため、貞操を守るために慌てて飛び起きる。目の前にあるのは、ふわふわの黒い髪に華やかな顔立ちの男子の顔。三年生でこの学園の生徒会長、胡桃蒼(くるみあおい)先輩だ。

「蒼先輩、こんなところに何しに来たんですか?」

体を起こして訊ねると、「お前と同じ目的。昼寝」と返ってくる。蒼先輩は庶民じゃなくて御曹司ってやつなのに、プライドがとても高いわけでもなく、庶民の事情などを一番知ってるから話しやすい。
蒼先輩が寝転がり、「早く横になれよ」と私を見つめる。私がゆっくり隣に寝転ぶと、蒼先輩の心の声が聞こえてきた。

(一緒に寝るって何か結婚したみたいだな。手、繋ぎたい。キスをしてめちゃくちゃにしたい)

男子ってみんなこんなことしか考えてないの、と大声で言いたい。何で私と仲のいい男子はこうなんだ。

真っ赤な顔を見られたくなくて、蒼先輩に背中を向ける。蒼先輩にそんな風に思われているのが恥ずかしい。好きとか、そういうのじゃないんだけど、やっぱり好意を持たれてるってわかるとちょっとドキドキするものだ。

「美紅、そういえば今度テストがあったよね?」
(確か数学と英語の小テストって一年生が話してたぞ)

「はい。数学と英語の小テストです」

ゆっくりと蒼先輩の方を見れば、顔がやけに近くて慌ててまた背中を向ける。

「よかったら、勉強教えてやるよ。数学が美紅は苦手だろ」

「いいんですか?」

嬉しいです、そう言おうとした刹那に蒼先輩の心の声が聞こえてくる。
(よし、自然に誘えたぞ。あとは、学校の中じゃ集中できないとか言って家に連れ込むだけだ。部屋についたら何を教えようかな……。キスをして、押し倒して、もしも拒否するなら手足を縛って閉じ込めて、完全に俺のものにしてやる。婚約者になるまで外に出さない。ゾクゾクする。楽しみだなぁ……)

「……お気持ちは嬉しいのですが、雫ちゃんに教えてもらうので結構です」

「えっ、ダメなのか?」
(せっかくお前を手に入れるために檻とか、手錠とか、色々揃えたのに……)

何て恐ろしいものを揃えてるんだ、この人は……。ジッと上目遣いを意識してこっちを見てるけど、騙されたりしない!

その時、授業開始五分前を告げるチャイムが鳴り響く。次の授業は確か世界史だ。

「蒼先輩、もうそろそろ行きますね。授業遅れちゃう!」

「あっ、うん」
(もっと話したかったな……。次は離さないようにしないと……)

蒼先輩の声を聞きながら、教室へとただ走る。心臓はバクバクうるさかった。

「友達男子四人、全員ヤンデレなんですけど!!」
「ええ〜!四人ともヤンデレだったんだ。それは災難だね〜」

「……嬉しそうに言うのやめてくれるかな?そもそも、異性の声が聞こえる薬を飲ませたの雫ちゃんだよね?」

蒼先輩の心の声を聞いた翌日、私は雫ちゃんにそのことを話していた。相変わらず本人は楽しそうだけど。

でも、放課後の教室で雫ちゃんと話す時間は楽しい。実はヤンデレだったあの四人のことを考えると胃が痛くなりそうだけどね。

「でも、薬の効果があるのはあと三日くらいでしょ。頑張ってるじゃない!」

「まあ、あと三日であんな恐ろしい心の声が聞こえなくなるのは嬉しいよ。あの四人のことは恐怖だけど」

そんなことを話していると、ガラリと音を立ててドアが開く。振り向けば、十くんがふわりと微笑んでいる。

「美紅ちゃん、一緒に来て?」
(断っても連れて行くけど)

笑顔の裏にある心の声が怖い……。雫ちゃんの方を見れば、親指を立ててニコニコ笑っていた。いや、助けてよ!

「ちょっと美紅ちゃん借りるね」
雫ちゃんに笑いかけ、十くんは私の腕を掴み、私を連れて教室を出て行く。

私、どこに連れて行かれちゃうのかな……。



十くんに連れて来られたのは屋上。夕焼けが綺麗でロマンチック。ずっと十くんの心の声で「可愛い。閉じ込めたい」って聞こえてるけど……。

「夕焼け、すごく綺麗でしょ?一緒に見たくて」
(美紅ちゃんをやっと独り占めできる!)

「うん、とっても綺麗。ありがとう」

でも、夕焼けを見るなら全然いつでもいいのに、どうして雫ちゃんとの話を中断させてまで連れて来たんだろう……。すると、十くんの顔がゆっくりと近付いてくる。

「み、十くん?」

「今日はね、美紅ちゃんと出会って三ヶ月の記念日なんだよ。だから、どうしても言いたいことがあるんだ」
(絶対に断らせない!僕のものにする。離さない)

何を十くんが言いたいのか、もう予想はついてる。ううん、もう答えだよね。

「君のことがすーーー」

十くんが言いかけた時、バタンと大きな物音がした。振り向けば龍羽くんに、悠利先輩と蒼先輩がいた。ヤンデレが全員揃っちゃったよ。
「俺の美紅、俺の婚約者に告白しようとするとかふざけてんの?」と蒼先輩。
(殺す!殺す!美紅は閉じ込める!)

「は?あんたまで何言ってるの?美紅ちゃんは俺と結婚するんだけど」と悠利先輩。
(美紅ちゃんにあんなに近付いて……。美紅ちゃん無防備すぎ!お仕置きしなきゃね?男は消す)

「美紅先輩、美紅先輩は僕のお嫁さんになってくれるんですよね?僕を選んでくれないと……」
(僕のものにならないなら、美紅先輩のことを無理やりにでも……。どうやったらあの男は消せるのかな?)

心の声がやっぱり怖い。さすがヤンデレと感心しちゃう。いや、感心してる余裕なんてないんだけど。

「美紅ちゃん、美紅ちゃんは僕を選んでくれるでしょ?だって僕は君のこと愛してるんだから」と十くん。
(愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる)

この四人のヤンデレから逃れられる術を、誰か教えてくれませんか?






初めましての方、初めまして!お久しぶりの方、こんにちは!エイミーです。

今回は、ヤンデレと逆ハーレムをテーマに書きました。四人の誰を選んでも束縛、バッドエンドだと監禁される運命となっております笑。実際に付き合うとなったらかなり迷う選択です。

異性の声が聞こえるというファンタジーな薬を登場させましたが、書いていて、ちょっと飲んでみたいなという興味が湧きました。職場は男性が少ないんですが、心の声が聞こえるって面白そうだなと思ってます。悪口とかが聞こえるのは怖いですが……。

読んでいただき、ありがとうございました。また次の作品でお会いしましょう。








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