「あら、また来たの? 今日はなに?」


教室にいたくない時、体育の授業をサボりたいときによく来ているのですっかり顔なじみだ。


きっと保健の先生もユウナの嘘を見抜いていると思う。


それでも保健室から叩き出すこともなく、ベッドを貸してくれるのだ。


「腕が痛くて」


そう言いながらなれた様子で丸椅子に座り、痛い方の腕を見せた。


「真っ青じゃない、どうしたの?」


ユウナの腕を見てさすがに驚いた様子だ。


慌てて席を立ち、棚から湿布を取り出して戻ってくる。


「体育の授業で、ちょっと」


ユウナは言葉を濁して説明した。


この先生になら悩みを相談できるかもしれないという思いはあるものの、まだそこまでの勇気が出なかった。


「体育ではなにをしたの?」


「バレーのトスの練習です」


「そう。きっとものすごく力の強い子がいたのね?」


頷いていると、腕に湿布を貼られてヒヤリと冷たかった。


だけどとても気持ちがいい。


「今日1日は重たい物とかもたない方がいいわね。担任の先生には伝えておくから」


「はい」


これでもう終わりかとガッカリしてしまう。


どうせなら1時間くらいベッドで横になっていたかった。