涙目で咲希に訴えている所へ唯花ちゃんが寄ってきて、
「ね、本多さん。昨日の体育館でのことなんだけど。バスケ部の休憩時間に一輝さんと二人で何か話してなかった? そんな感じに見えたんだけど」
「えっ? 一輝先輩? 昨日?」
唯花ちゃんの言っていることがしばらく理解できず、ポカンとしていたら、咲希が私の代わりに唯花ちゃんへ返事をしてくれた。
「それね、一輝先輩って誰とでも仲良くなるでしょ。たまたま私の練習を見に来てた柚葉と体育館の1階で会ったから、私が一輝先輩にちゃんと紹介しただけなの。誤解しないでね」
ああ、そう言われたら昨日の帰りに体育館で一輝先輩と話したっけ。
昨日は長い1日だったから、一輝先輩のことなんてすっかり抜け落ちていた。
「そうなんだ。本多さんと一輝さんがなにか特別なのかと思った。良かった」
やっぱり唯花ちゃんは一輝先輩のことが好きなんだね。
大丈夫だよ、唯花ちゃん。
今、私は一輝先輩どころじゃない状況なの。
このクラスの噂話をどう切り抜けるかで頭がいっぱいなの。