「ね、柚葉。嘘のカレカノになったって柚葉が苦しくなるだけだよ。暖先輩と一緒にいたとしても、そこには嘘しかないんだよ。いいの?」
「う、ん。私に免疫ができるまでだし。男の人への苦手意識が取れたら、その先は・・・」
「その先は、暖先輩とは何もなくなるってことでしょ?」
咲希にハッキリと言われて、なんだか気持ちが落ち込む。
私が落ち込んでいるのに咲希はまだニヤニヤしていて。
「ふーん、あの暖先輩がねぇ。そんな提案してくるなんてねぇ」
「咲希はさっきからずっとニヤニヤしてない? 少しは私の気持ちも分かってよ」
「柚葉、暖先輩が好きだったら嘘カノから本命になれるように頑張りなよ! あっ、もうこんな時間。教室へ急ごう」
咲希が教室まで走り出したから私も咲希に置いて行かれないように走った。
その時、体育館の前でダンと一輝先輩がまだ話をしているのが見えた。
ダンと一輝先輩は仲が良いって咲希が言ってたから、話が盛り上がっているのかなって思って気にも留めず、私は教室へと向かった。