雪が解けて、木々からの新緑がちらほらと芽吹いてきた北海道に私とダンは来ている。
香梨奈ちゃんの死から7年。
香梨奈ちゃんが生きていたら高校を卒業する年に私とダンは小高い丘の上にある香梨奈ちゃんが眠るお墓の前に立っている。
「香梨奈、今日は香梨奈に報告があるんだ」
ダンが香梨奈ちゃんのお墓に両手を合わせて、香梨奈ちゃんにゆっくり語り始める。
「香梨奈と約束した通り、香梨奈が好きになってくれた人と、結婚したんだ。祝福してくれるか」
私はダンの隣でダンの話す言葉を聞いている。
「桜の舞う頃、ユズに子供が生まれるんだよ。もう性別は女の子って分かってる」
私はおなかに手を当てて、香梨奈ちゃんに「この子だよ」って教えて。
「香梨奈、きっと香梨奈に似た可愛い女の子が生まれてくるよ。もう名前も決めてるんだ」
「生まれてくるこの子の季節に咲く花と、香梨奈の梨を一字もらって」
『梨桜 ---りお--- 』
私とダンは香梨奈ちゃんのお墓にたくさんのお花を供えて、香梨奈ちゃんに報告をした。
香梨奈ちゃん、やっと香梨奈ちゃんのお姉さんになれたよ。
私、ダンと幸せになるね。
その時、丘の上に春の香りを運んできた優しい風が私とダンを包み込んだ。
『あっ、今、香梨奈ちゃんが来てくれたね』
私とダンは同じことを感じて、二人で微笑み合った。
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