弾く予定にしていた曲が弾き終わり、会場にお辞儀をして控室へ戻ると、控室では先生が拍手をくれてハグをしてくれた。

「柚葉ちゃん、とっても良かったわよ。今回は最高の出来だった。優勝できると思うわ」

「大丈夫だったかな、私。今頃になって震えてきちゃった」

「あら本当だ。こんなに緊張していたなんて。少し座って休みなさい。今、温かいお茶を用意するわね」

「先生、ありがとうございます」

先生は飲み物を取りに給湯室へ行ってくれた。

控室に一人になると、ダンのこと、香梨奈ちゃんのことを思って涙が出てくる。

ダンはどうして連絡をくれないんだろう。

今日は北海道から戻ってきているはずなのに。

私はカバンに仕舞ってあったスマホを取り出し、ダンからの着信が無いことにため息をついた。