「俺さ、ダンの妹の話は聞いていたんだよ。その妹が柚葉のピアノを聴きたいってずっと言ってたんだって。だからさ、明日はダンの妹のために弾いてあげて」

「そうなの? たっくん知っていたの? じゃあどうしてこの前教えてくれなかったの?」

「ん。そ、それはさ・・・なんて言うかさ。言えるかよ!」

なんでたっくんが逆切れするの?

「たっくん、怒らないでよぉ」

「ご、ごめん。でも明日はちゃんと行くこと! 分かった?」

「・・・うん。わかった。香梨奈ちゃんのためにピアノ弾くよ」

たっくんがここまで力強く言うのは珍しい。

もしかしたら本当に香梨奈ちゃんが私のピアノを聴きたいって言ってくれていたのかも知れないな。

私はコンクールへの出場を決めて、明日に備えてピアノの練習に没頭した。