私はこの前話し掛けてくれたお向かいさんのお宅にダンのお家の事情を聞いてみようと、そのお宅の門の前に立つ。

そこのおじさんが私を窓から見ていたのか、インターホンを押す前に玄関から出てきてくれた。

「この前も宮野さんちに来た子だよね?」

「おはようございます。先日はありがとうございました」

「今日は、また宮野さんに用事なの?」

「はい。連絡が取れなくて心配で来てみました」

「あー、そう。それで、あなたは宮野さんとどんな関係の人?」

「私、本多柚葉と申します。えっと、宮野暖さんとお付き合いさせてもらってます」

「そう、暖くんの彼女さんなの。暖くんと連絡とれないの?」

「はい。携帯を壊してしまったとかで、連絡できないんです」

「宮野さんの玄関に貼ってある通りで、妹の香梨奈ちゃんが亡くなってね。今日から葬儀のために北海道へ行ってるんだよ。私は留守を頼まれてね」

「香梨奈ちゃんが・・・。嘘ですよね、おじさん。私、この前香梨奈ちゃんに会ったばかりですよ。嘘だ。そんな事・・・」

「明日は帰ってくる予定だけどね。この台風だから飛行機は飛ばないかも知れないな」

私はおじさんの話す声が耳に入ってこなくて。

香梨奈ちゃんと、ダンとご両親のことが心配で。

香梨奈ちゃんが亡くなったなんて信じられなくて。

どうしていいのか分からなくなってしまった。

「大丈夫? あなたは暖くんからの連絡を待つといいよ。落ち着いたら連絡あるんじゃないかな」