「結城さん、ピアノ弾かせてくれてありがとうございました。楽しかったです」
「こちらこそ、無理にお願いしちゃってごめんなさいね。ピアノがとても上手なのね。子供たちも喜んでるわ。どうもありがとう」
私は結城さんにお辞儀をして、そして子供たちに小さくバイバイをしてダンのところへ向かった。
「ダン、ごめんね。寄り道してた」
「ううん、いいよ。ユズのピアノで子供たちが喜んでたな。ユズもいい笑顔だった。さすが俺の彼女だな」
「俺の彼女って。照れるからやめてよ」
「あはは。彼女じゃん。でさ、窓越しなら香梨奈に会えるって」
「本当? 私も行って大丈夫なのかな」
「もちろん。香梨奈もずっとユズに会いたがってたんだぞ」
「香梨奈ちゃんに私のこと話したことがあるの?」
「ん? ああ、そうだな。話したことあったかも知れないな」
ダンは照れたようにして話を誤魔化している。
「ねぇ、私のことをどんなふうに香梨奈ちゃんに話したの?ね、聞きたい」
私はダンに意地悪したくなって、ダンの目を見ながら質問した。
「なっ、何も言ってないよ。香梨奈はユズのこと知らないよ」
「ふふっ、さっきは会いたがってるって言ってたのに」
「うるさいなぁ。バカユズ」
困った顔のダンもかわいい。
「ほら、行くぞ」