「ユズ。俺じゃだめか?」
「私・・・」
「俺のこと、嫌いか?」
「嫌いじゃないよ。ダンには感謝してるし、好きだよ」
「じゃあ、どうしてだめなんだよ。どうして一緒にいちゃダメなんだよ」
「私、好きな人がいるの。だから、ダンとはお付き合いできない」
今度こそ、取り返しのつかない大きな嘘をダンについた。
「は? なんだよ、それ。ユズに好きな奴がいるってさ、嘘だよな?」
「うっ、嘘じゃないよ。えっと、本当だよ」
「ユズ・・・」
「ダンごめん、もう休みたいから。ごめんなさい」
私はベッドに横になり、ダンに背中を向けて布団を頭から被った。
まだ泣いちゃダメ。ダンが居なくなるまでは泣いちゃダメ。
「ん。分かった。俺、ユズと過ごした時間楽しかったよ。じゃあな、ユズ」
そう言ってダンは私の部屋から出て行った。
玄関のドアが閉まる音を聞いた瞬間、静かに流していた涙が嗚咽に変わり、何時間もベッドの中で泣き続けた。
「ダン・・・信じることができなくて、ごめんなさい」