「ユズ、俺さ。俺・・・」
ブーッ ブーッ ブーッ・・・
「チッ、誰だよ、しつこいな」
「ダン、確認したら? 誰か急用かも知れないよ」
「ああ、もう。分かったよ。ちょっとごめんな」
ダンは私に回していた腕を離して、ポケットからスマホを取り出し着信を確認した。
「あっ、ちょっと電話出ていいか?」
「もちろんだよ、早く出ないとまた切れちゃうよ」
そしてダンが通話ボタンをスライドして電話に出る。
「香梨奈? どうした?」
えっ・・・その着信は香梨奈さんから?
私はダンから一歩後ずさりして、ダンの顔を見る。
ダンは眩しいほどの優しい笑顔で香梨奈さんと話していた。
こんなダンの顔は見た事ない。
私、やっぱりとんだ勘違いしてた。
ダンが私のことを想ってくれているなんて。
そんなことあるわけないのに。
香梨奈さんの存在を私は知っていたのに。