「うん、分かったよ柚葉。俺、柚葉の隣で見てるから。久しぶりに柚葉のピアノ・・・じゃなくてキーボードだけど聴きたい」

「ハルとユズが知り合いだったのは驚いたな。でも、ハル。演奏中は大人しくしてろよ。じゃ、始めよう」

タクさんの掛け声でそれぞれの場所に戻り、練習を兼ねて1曲演奏することになった。

私のすぐ隣でたっくんがずっと私を見ている。

演奏が終わって、思い思いに悪かったところをチェックしていると、

「柚葉、ここなんだけどさ」

たっくんが楽譜を指さしてアドバイスをしてくれる。

「そうなの、そこね難しいの。指が追い付かなくて」

「だと思ったよ。柚葉の手は小さいからね。俺用に作ってるからさ、指が厳しいよな」

「これ、たっくんが作曲したの?」

「そうだよ、オリジナル3曲とも俺が作曲した」

「わー、凄いね。たっくん作曲できるんだ」

「うん、こっちの活動の方が楽しくなってピアノ辞めちゃった。ごめんね、柚葉」

「私に謝ることじゃないけど。先生が寂しがってるんじゃない?」

「母さんは大丈夫だよ。柚葉がいればいいんだってさ」

「そんなことないよ。たまには教室に来てピアノ一緒に弾こうよ、たっくん」

「柚葉が誘ってくれるなら、毎週柚葉が来る教室の日は会いに帰るよ」

「うん。待ってるね」